デザイナーというポジション~業界でのデザイナーの役どころ~

第2回でふれましたので、
早速今回、"デザイナーのポジション"ということで、題目にさせてもらいました。

夢のデザイナー、されどデザイナー、そして現実はどうなのか?
いきなりシビアな話になりますが、現実は『全て能力によりけり』です。

前回もクリエイティブディレクターやアートディレクターのことにかなりふれましたが、
実際の現場では、「デザイナー」という肩書きは、正直軽いポジションになります。

こう言うと夢がないかもしれませんが、現場でのデザイナーの扱いは、
大概"若手のオペレーター兼レイアウト担当"というのが妥当かと思います。
特に、印刷会社や自社で大量製作している会社はこういう扱いが多いです。

逆に、デザイン事務所の場合、営業担当者がいる所は別として、社長がクリエイティブディレクターと営業を兼任、その他はチーフのアートディレクターとデザイナーのみ、なんていうパターンもあります。

そういった所は、少人数でしかもクリエイターばかりだったりするので、デザインの世界にドップリつかりやすいと思います。
しかし、デザインレベルも高いので(周りはみんなデザイナー)制作力での弱肉強食の戦いに喰らいついてゆかねばなりませんが...。
その環境で頑張っていけば、非常に鍛えられるはずです。

私も特に美大の時は、極端に言えば学内の学生全員がクリエイター・デザイナーなので、
その中でなんとかせめて学科内くらいは制作で目立とうと必死でした(笑)。

当時、クラブミュージック、特にドラムンベースやテクノにハマッていたので、妙にスペーシーなプランを作ってみたり、プレゼンの写真も当時まだPhotoshop4.0が出たぐらいの頃でパソコンも一式揃えると50万はするしですぐに持てないので、ブラックライトで光を演出して一眼レフで撮ったりしていました。

アナログですね~、自分ではかなりハイテク気分でしたけどね(笑)。
今思えばかな~り"奇をてらう"提案が多かったかなと。

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しかし!

ここで言い切ってしまいますが、
仕事の環境の中では、正直、"デザイン"が全てではないのです。

どうしてもデザイナーを目指すとなると、デザイン!デザイン!と展示会に行ってみたり、
洋書を買ってみたりと、世界に入り込むことばかりに一生懸命になりがちですが、
ここで落とし穴なのが、そうすることで世界に入るのはいいが、
大概入ってしまっているのは『自分の世界』だったというオチです

先ほどお話した私自身の経験もそうですが、デザインに走り過ぎる
往々にして独りよがりな世界におちいってしまうということがよくあります。

実際の現場の仕事環境の中では、相当なクリエイターでない限り、
その人の好きなものを作ってくれなんて都合のいい仕事はありません。

というか、あり得ません。

著名なデザイナーですら、そのポジションにくるまでの下積み仕事時代が必ずあります。

このことに関しては、自分も相当痛い目にあっています(笑)。
美大卒業すぐなんかは、社会からすれば、"クリエイター気取りの自信過剰のおバカ野郎"ですよ、ほんと。ほとんどの美大・美術系学校の出身者は最初の就職で鼻をへし折られてるでしょうね(笑)。

まあ今でこそ笑えますが、当時は真剣ですから。

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ここでポイントなのですが、
逆に言えば、『ビジネスを理解したデザインは受け入れられる』ということなんです。
ここをよくよく理解していただければと思います。

また、ここが一番の肝で難しいところなのですが、どの著名デザイナー・クリエイティブディレクターも必ず本人のデザインセンスをフルに発揮しながら、ベストなビジネスモデルをその制作物を使って構築しています

デザインする人に求められていることは、高い次元では『制作物を通してのビジネスモデルの構築、もしくは訴求』ということになります。
決して間違っても、表面のレイアウトや奇抜なデザインを追及することではありません。

ここの理解に行き着くまでに、デザイナーを目指す者皆、良くも悪くも痛い目にあってきます。なので、皆さんは是非そうならないよう、仕事である以上「デザインはビジネスだ!」ということをよくよく理解しておいてください。


それをどこまでもクリエイティブに表現している人こそ、売れっ子のクリエイティブディレクター
の方々なんです。
ここを理解して制作物を見ていくと、まったく見え方が変わってきます。

どういう風にクライアントの商品を売る為の流れを広告上で展開しているのか、
という風に視点が変わってきます。


アートな感覚とビジネスが融合されているというところに、
デザインや広告の面白さがあるんです。

デザイナーになるには ~意外な近道ルート~

前回は私の実体験を通して、デザイナーに至るまでの流れをお話しましたが、「じゃあ、どうすればいいの?」とお思いになった方も多いかと思います。

そこで今回は、デザイナーになるための近道ルートをお教えします。

私自身、美大にて建築系の学科→DTPのスクール→広告代理店にて実務、という行程でデザイナーに至りました。
また、スクールに在学中に”DTPエキスパート”という資格を取得しています。

正直、前回のお話通り、ここまでご丁寧に道を歩んでいく必要はありません。
もっと早いルートでデザイナーになる道があります。

まず一つは、高卒でいきなりデザインの専門学校に行くというルートです。
一見美大に行っている方が何かハイソサエティー(笑)な感じがするかもしれませんが、通過している私が言うのもなんですがそんなことはありません。

むしろ、専門学校の方が実務に特化した学習を1年ないし2年間の短期間で習得できるので、率先力があります。

美大生を批判するつもりはありませんが、美大学生特有の”妙な自信”にあふれた学内での活動は、現場で仕事をしている人間から見れば”アーティストごっこ”です。
そういう自分も、特に在学当初はかなりの”気分はアーティスト”でした笑。

大概、最初の就職で鼻をへし折られますね笑。
それが現実です。仕事の現場にナルシストなアーティストは要りませんから。

たしかに専門学校も美大と似たり寄ったりのところはあると思いますが、やはり”就職を見据えた学習に特化している”という点でおススメします。

私も美大卒業と同時にDTPのスクールに行きましたが、こういった所も、完全に就職・転職を見据えてカリキュラムが組まれているので、3ヶ月しか通学していませんでしたが、非常にスムーズにスキルアップできます。

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但し、「ゆくゆくは大物のアートディレクターになりたい」というような大望を持ち、また、実力にもそこそこ自信があるという人は、美大をおススメします。

何故かといいますと、名前の通り”美術大学”ですから良くも悪くもアーティスト的な要素を大事にしてもらえるという部分と、なにより、コネクションが作りやすい点です。

正直、大学生は4年間ですので時間があります。サークルや同級生や先輩、バイト先の付き合いなど、時間と大学の人脈があるので、非常にアクティブに動きやすくなります。

また、名の通った大学ほど著名な教授や非常勤講師が出入りしていますので、顔を覚えてもらう機会も多くなります。

多摩美術大学(http://www.tamabi.ac.jp/)などは、今もっとも旬なアートディレクターの一人、佐藤可士和さんが非常勤講師をされています。
私も美大の時は、建築家の竹山実さん(http://www.m-take.com/)とゼミの中で普通にお話させてもらっていました。

そういった、専門学校と美大の”良し悪し”もあるので、検討してみるのがよいかと思います。
※桑沢デザイン研究所(http://www.kds.ac.jp/)といった、どこまでも美大に近い専門学校もあります。美大入試については、また詳しくお話します。

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あとは、デザイン科のある高校を出ていきなりデザイン事務所に就職、というルートです。これはあまりおススメしません。
というか、これは相当でないと就職できないと思います。

この場合、高校卒業後、私のようにDTPやWEB系のスクールに通ってからの就職をおススメします。

業務の現場では、全てはその人材が”使えるかどうか”にかかっています。
大卒の場合、ある面箔でごまかしてゆくゆくの成長を見据えてもらう、なんてこともあり得ますが(そうないと思います。)、仕事の現場はいつでもそんなユウチョウなことを言ってはいられません。

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ようは、学歴やどういう行程を経てきたかということよりも、”仕事で使える人間なのかどうか”ということが一番重要になってくるのです。

才能だけでなく努力も報われる、あくまでも、そのための”道”なのです。

デザイナーはアーティストなの?~仕事としてのデザイン~

クリエイティブに想えば想うほどぶつかるのがこの問題です。
仕事やクライアントが絡んでくると、どうしても言葉を悪く言えば独りよがりなデザインは嫌われます。

アートとしてはクオリティーが高いはずなのに、何故営業にもクライアントにも受け入れられないのか。

答えは簡単です。『カタチにした結果が売り上げと結びつかないと判断された』からです。

私も特に仕事を始め出す前の当初、非常にここに悩みました。

とにかく美大時代は、奇抜な提案と時代を先行く提案を心掛けていました。
それは正直、自分が目立ちたく、認められたい(笑)という気持ちからでした。

たしかにそれは、美大の中では通りました。
それは「ビジネスではない」からです。

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それを本当に知ったのは、仕事をし出してからでした。
大学時代も、「何故世の中の広告はこんなにダサいんだろう?自分だったらもっとトータルにカッコ良く出来る!!」と本気で思っていました(笑)。

それもある面、間違いではないでしょう。ただ、一番の大きな間違いだったことは、その発想が『独りよがりな、好みのデザインでのアプローチ』であったということでした。

ここも重要なことですが、この世の中では人の為に役立つものでしか評価されません。絶賛されているアーティストの美術作品ですらそうです。
そこには、「人を喜ばせる」、もしくは「人に共感される」という重要な要素が入っています。

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よく「アーティストとデザイナーは違う!」なんていう話を聞きますが、私は違うと思います。見つめる方向は前途の通り同じだと思います。

大きな違いは、「自分のオリジナリティーある表現を、世の中の需要にマッチすることができた、もしくはマッチした」か、「世の中の需要にどこまでも合わせて、綺麗に表現できた」かの違いだと思います。

前者がアーティストで、後者がデザイナーです。

そういう意味では、誰でもがデザイナーになる資格があると思います。
「綺麗に見せる」ことはコンピューターのオペレーションでカバーすることができます。コンピューターは時間を掛ければ本当に誰でもが扱うことが出来るようになる素晴らしい「道具」です。

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ここは予断ですが、もしあなたが「アートディレクター」になりたければアーティストな発想を、「プランナー」になりたければビジネス的な発想をより強く持っていかなければなりません。

デザイナーの後に続く職種は結構あるんです。

デザイナーになりたい!! ~就職前の希望と現実~

私自身、美大に入学後、建築学科でしたが晴れて念願だったグラフィック系の職に付くことができました。今は何気な~くデザインの仕事をしていますが、正直美大に入学する前には夢のような話でした。

“デザイナー”。なんて素晴らしい響きなんだろう笑。まだまだ漠然としていましたが、そんな憧れの職業に自分が付けるのだろうかと思ったものです。

当時、都内の美大デザイン科の倍率は数倍~数十倍。2,3浪は当たり前で、美大受験生の必須項目「鉛筆デッサン」のスペシャリストでない限り現役での合格はまず無理でした。まあ奇跡的にうまく書ければ別ですが笑。

そんな中、立体模型の制作ならいける!と講習の中で気づき、美大の建築学科オンリーに絞り、無事現役美大生に合格しました!!

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という、ある面非常に長い道のりと行程を経て、現在のデザイナーの職に至るのですが、果たして、この王道まっしぐら的な行程は必要だったのでしょうか?

答えは、「ノー」です。自分で認めてしまうのも辛いですが(笑)、正直、ここまでの真っ直ぐ直行の行程はいりません。

ここポイントですよ、『優秀なデザイナー程、学歴に拘らない苦労人』なのです。今まで何人もデザインする人間を見てきた自分が言うのですからまず間違いないでしょう。本当にデキル先輩や上司ほど、専門学校卒やデザイン科高校を卒業された方が多いんですね。

ある面、希望に思いませんか?誰にでも可能性があるということです。
自分は高校の同級生にとても絵の旨い奴がいて、彼には勝てないと当時とても劣等感を感じたものですが、今は二人ともデザイナーになってしまいました。そんなものです。

一番は自分がなりたいかどうかが重要です。そこに高い志があれば必ず夢は叶います。

そしてまた逆を返せば、学歴ではなく、純粋な志と高い実務能力が必要なのです。
※ここについては、また次回お話しようと思います。

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さあ、皆さんは私のような御丁寧な遠回りはせず、真っ直ぐデザインの道に突き進んでください。さまざまな近道ルートがあります。

先程もいいましたが、一番はデザイナーになりたい!という強い志です。

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